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   写真リポート   

大田の「本屋集合」に行ってきました

文と写真:細田雅大
2026年4月18日

 大田市のコミュニティカフェ「tane」に、地域の本屋さんが集まるらしい......。

 そう聞いた私は「これは大チャンスだ」と思いました。

 何を隠そう私は今、とにかく宣伝に励まねばならないのです。

 なんの宣伝でしょう?

 来る4月24日、出雲市の本屋「あわい堂」さんを会場として、私は、新しい読書会を始めるのです。しかし、この読書会の仕組みがちょっと変わっていて、なかなか理解されにくい。

 なので私は、本に関係のある場所ならどこにでも出かけていって、説明して回っているのです。

 「tane」で開かれるイベント「本屋集合」には、そんな私の話に、快く耳を傾けてくださる方が多そうだ......。

 そう考えた私は、愛車ハイゼットの燃料タンクを満杯にすると、さっそく松江から車を飛ばしたのでした。

午前8時、松江の自宅を出発です。穏やかな宍道湖が左手に見えます。出発したばかりの私は完全な躁状態。旅の気分に浮かれています

松江市の西隣、出雲市に入ります。旅の高揚感は落ち着き始め、来週に迫った読書会のことを考え始める私です。「いちから一緒に新書を読む会」と名付けました。この読書会はちょっと分かりにくい。なぜなら2段階になっているからです。まず「新書を選ぶ会」が開かれます。そこで無事に一冊選ばれたら、数カ月後、やっと「新書を読む会」に進むのです

一畑電車が横を走っています。この電車の姿が目に入ったとたん、またもや私は躁状態になりました。電車を見るだけで旅の気分が復活するから不思議です

安全運転に務めつつも、心の片隅では来週の「新書を選ぶ会」に思いを馳せる私です。参加者は、意中の新書を持ち込んで、「なぜ自分は、この新書を他の人と一緒に読みたいと思うのか」語ることになります。人の考えはバラバラだから、まったくバラバラな新書が持ち込まれてくるかもしれません。などと考えているうちに「道の駅 キララ多伎」に到着です

釣り人である私は、海を見るとルアーを投げずにはいられません。と、その時、ちょうど近くを素敵な淑女が通りかかるじゃありませんか! 「写真を撮ってくれませんか」とお願いすると、快く承知してくださいました。穏やかな海に向かってルアーを投げつつも私は、やはり来週の読書会に思いを馳せるのでした

人の考えはバラバラである。人の考えはそれぞれ違う。だから、読みたいと思っている新書もバラバラのはずである。もしも、みんながバラバラな新書を持ち込んできたら、果たして私たちは、妥協点を見出し、みんなで一緒に読む本を一冊、選ぶことができるのだろうか?

大田市に入りました。土地勘がないため、私はいっそう慎重に運転せざるを得ず、そのため、読書会のことを考える余裕がなくなりました

これがコミュニティカフェ「tane」です。風情のある素敵な建物ですね。以前は「サクラテラス」という名前だったのだとか

出店者の中に、来週の読書会の会場となる「あわい堂」さんがいらっしゃいました。いちばん目立つところに私の読書会のチラシを置いてくださっています。私の心の目から感激の涙がほとばしり出たのは言うまでもありません

他には「句読点」「書堂しろへび」「Dr. Library」「虹屋」「magocoro books」の皆さんが出店しておられ、フードコーナーでは「菓子工房 sa.ki.7」さんと「tane」さんが、参加者の喉を潤し、お腹を満たしておられました

絵本の読み聞かせとクラリネット演奏を披露される「虹屋」さんと「あるもに」さんです。親子連れも多く、皆さん大喜びでした

「私のようなムサ苦しい男が、こんな素敵な会場に長くいてはいけない」。そう思ったので、途中、会場を抜け出して周辺を散歩しました

「サル出没注意」。この看板を見て「サルに間違われないようにしなければ」と思ってしまった私です。なぜなら私は同世代の人たちよりもずっと機敏なようなのです。その年齢不相応な機敏さのせいで、野生のサルに間違われる可能性があるのではないか......。そんなことを思わされた看板でした

驚いたことに動物園がありました。「tane」から歩いて数分のところにある代官山動物園です

これはトカラヤギ。園内には私しかおらず、もしかすると、このヤギは久しぶりに人間を見たのかもしれません。固まって動かなくなり、私を見つめます

これはピグミーゴート。このヤギもまったく動かず私を見つめました。でもそのうち、次のように言っているのが聞こえてきました。「へえ、アンタ、変わった読書会を開くんだねぇ。でも、心配してもしょうがないよ。なるようにしかなるメエエエエエエ」

森永アイスクリームの冷凍庫が、いいあんばいに朽ちかけています。私の思いは来週の読書会に舞い戻っていきました。バラバラな人間が、バラバラな新書を持ち込み、それでもなんとか合意形成をしようと務める。つまりそれは、現代社会の縮図ではないか? もしも合意形成ができなかったら? それはつまり、本ですら一冊決めることができないほど、我々は「分断」してしまっているということではないか? 来週の「新書を選ぶ会」は、こうした現代の問題を乗り越えるための一里塚となるのだ

そんな大げさなことを考えながら会場に戻った私は「magocoro books」を運営している川上夏実さんに話をうかがいました。今回のイベント「本屋集合」を企画されたのが川上さんなのです。大田にはこの6月に今井書店が出来るそうなのですが、2024年3月末にジャストが閉店してから、ずっと本屋がなかったとのこと。そこで「なるべく本に触れる機会を増やしたいという思いから企画しました」とのことでした

驚いたことに川上さんは読書が苦手だったそうです。ところがある時、中前結花さんの『好きよ、トウモロコシ。』という本を読んで、読書の素晴らしさに気づいたのだとか。「tane」において「magocoro books」を運営している大きな目的の一つが、中前結花さんの著作をなるべく多くの人に手にしてもらうことなのだそうです

けっきょく私は終了時間の3時までぐずぐず会場に居残り、皆さんにいらぬチョッカイを出しながら、楽しい時間を過ごしたのでした。「tane」のそばには駐車場がないので、歩いて10分ほどの大田市民センターの駐車場に車を駐めていました。そこまで、のんびり歩きました。大田の素敵な町並みを眺め、味わい深い三瓶川を覗き込みながら願ったのは、やはり来週の読書会のことでした。「きっと誰か、参加してくれますように。そして、たとえ合意できなくても、楽しい会になりますように」

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