手結のとんどさん
ウクレレ弾いて、裁判所に出頭
02年09月19日
今朝、裁判所に行ってきました。マンハッタンにあるMidtown Community Courtという裁判所です。
実は数日前、「ウクレレで日本の歌を路上演奏し、ニューヨーカー相手にいくら稼げるか」という雑誌企画を行ったところ、無許可演奏が警官に見つかり、出廷を命じられてしまったのです。
裁判所には、私のほかに20人ほど呼び出されていました。映画などで観ることのできる法廷を、もっと狭く、もっと乱雑にしたようなミニ法廷でしばらく待っていると、私を含めた5人がまとめて別室に呼ばれ、弁護士から説明を受けました。私は弁護士を雇っていません。ですからこれは、公に割り当てられたいわゆる公選弁護士です。
「犯罪ではなく違反だから、おとがめなく訴訟取り下げになるか、Quality of Lifeセッションを受けて訴訟取り下げになる」とのことでした。ほかの人のケースを聞くと、公共の場でアルコールを飲んでしまったという違反者が多いようです。
ミニ法廷で待っていると、名前が呼ばれ、裁判官の前に立つことになりました。私の隣には先ほどの弁護士が立っています。弁護士が、「この者は、グランドセントラル駅で音楽を演奏し、無許可で金を稼いでいました」と言うと、裁判官はすぐに、「Quality of Lifeセッションを受け、6カ月間何も違反しなければ訴訟取り下げ」と答えました。私の裁きは20秒ほどで終わりました。
次に、同じビルの最上階にある小さな会議室に連れていかれました。ここでセッションを受けるのです。しばらく待っていると、テレサという名の快活な黒人女性が入ってきました。
「もちろんあなたたちは、America's Most Wanted(アメリカ一のお尋ね者)なんかじゃないから安心してね」と言います。会議室には、むっつり黙り込む男だけが12人いました。誰もが小さな違反を犯しただけだと分かっていても、自分以外の全員が凶悪犯に見えかねません。テレサは場をなごませようとしたのです。
テレサによれば、このセッションは、「自分の行いが、いかにコミュニティーのQuality of Life(生活・生命の質)を悪化させかねなかったか」を反省するためのものでした。彼女は、タイムズ・スクエアを例に出しました。
「10年前のタイムズ・スクエアは今のようではなかったの。ドラッグのディーラーがうろうろし、無職の男たちが四六時中たむろして酒を飲んでいたの。今はまるで家族向けのテーマパークみたいで、子供と一緒に楽しめる場所になっているけれど、もしお酒を飲んで騒ぐ人が増えたらどうなるかしら?」
私以外の全員が、公共の場でアルコールを飲んでしまった違反者です。みんな、形だけとはいえ、「なるほど。たしかにそれは困る。あんたの言う通りだ」という顔をしています。しかし私は、ウクレレを演奏していただけなのです。テレサが「あなたは何(の違反)をしたの?」と1人ずつ聞いていった時、つい私は言ってしまいました。
「音楽を演奏していました。みんなのQuality of Lifeを良くするためだったんです」
「でも、無許可だったんでしょ」
「はい、おっしゃる通りです」
私はすぐに同意しました。「この男は反抗的だ」と判断されれば、どんな目に遭うか分かりません。セッションは10分ほどで終了しました。裁判所を出た私は、なぜだか、「これでやっと俺も、アメリカという国に受け入れられたな」と感じていたのでした。(細田雅大)