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大停電が起きた!

03年08月18日

 コンピュータ画面を見ている時、何の前触れもなく電源が落ちました。最初に思ったのは「テロだろうか?」ということでした。窓から外を見てみました。もし爆発か何かが起きているのであれば、通行人の様子に異変が見られるはず、と考えたのです。

 通行人は普通に歩いていました。しかし、向かいのマクドナルドやデリ(小規模食料品店)が薄暗くなっています。私たちのオフィスが入居しているビルだけではなく、付近一帯が暗くなっていました。同僚とともにカメラを持って外に出てみると、すでにたくさんの人が屋外に出ていました。

 グランド・セントラル駅に行ってみました。真っ暗な地下鉄ホームから脱出した人々が、改札口を通って外へ向かっています。ギターや打楽器を演奏しながら「暗闇を讃えよ」と楽し気に歌う一団も含まれていました。即興で暗闇を讃え始めた宗教関係者でしょうか。それとも、地下鉄で歌うミュージシャンが音頭を取り、一般利用客も参加して盛り上がったのでしょうか。いずれにせよこれが、停電後に目撃した最初のお祭り騒ぎでした。

 私たちはダウンタウンに向かって徒歩で南下していきました。中枢同時テロを思い出さざるを得ません。あの時も同じように歩いたのです。「テロっぽいなあ」と同僚に言ったりしながら、どんどん南下していきました。でも、時々写真を撮る以外、何もすることがありません。14丁目のユニオン・スクエアまで行ってから、少し引き返し、同僚の知人宅で休むことにしました。

 ひと休みしてから、ロウソクの光に照らされて夕食を取り、また外へ出ました。まずは和食レストランへ向かいました。「ネタが駄目になるから、破格値で寿司を出しているに違いない」と考えたのです。しかしどの店も閉店しているか、もしくは食べ物を既に出し尽くしていました。しょうがないので、営業しているバーを見つけてビールを飲み、ほかの客に「これはテロだと思うか?」と議論を吹っかけたりしました。

 2回目のお祭り騒ぎを目撃したのは、午前12時過ぎ、トンプキンズ・スクエア公園でのことでした。たき火の回りでドラムが叩かれ、汗みずくの男女が半裸で踊り狂っています。しゃれたスーツを着て、中折帽子をかぶった白人男性がその中にいました。汗でスーツがびしょびしょですが、気にせず踊っています。「Burn your hat!(お前の帽子を燃やせ)」という連呼が始まりました。男は、帽子をたき火にくべるポーズを取って皆をじらしますが、実際には燃やしません。

 別の男が、どこから取ってきたのか、針金で連結された木材の束を持ってきました。男が誇らし気に木材をくべると、火勢が強まり、たき火を囲む人々の輪が広がりました。たき火を飛び越えて向こう側へ着地するという遊びが始まりました。「服に引火したら危ないな」とは思いませんでした。皆が酔っていました。私もそうだったのです。くたくたに疲れていましたが、浮き浮きした気分は、電力が復旧するまで続きました。(細田雅大)

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