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第1回 また捕まりました

05年05月17日

 3年前、ニューヨーク警察に捕まりました。グランド・セントラル駅でウクレレを演奏していたところ、警官に見とがめられ、裁判所への出廷を命じられたのです。

 今週、またもやニューヨーク警察に捕まってしまいました。5月17日の朝、ブルックリンの地下鉄ホームで写真を撮っていたところ、男女ペアの警察官に捕まったのです。雑誌「U.S. FrontLine」の5月4週号に「地下鉄に乗ってニューヨーク再発見!」という特集を掲載します。これの表紙に使う写真を撮影していたのでした。

 私は少し驚きました。「テロリストに地下鉄の情報が漏れるのを防ぐため」という理由により、地下鉄の写真撮影を禁止しようとする動きがあることは知っていました。しかし、検討されているだけで、まだ禁止になってはいないと思っていたのです。04年6月9日、私はこの動きについて書いています。そこから少し引用します。


<引用>

 ニューヨークの公共交通機関MTAが、地下鉄駅構内での写真撮影を禁止する方向に動き出しています。もちろん、多くのカメラ・ファンや市民運動家は、抗議の声を上げています。日曜日には、有志一同が地下鉄に乗り、いっせいに写真を撮りまくるという抗議運動も行われました。

 MTAのウェブサイトに、交通機関利用者が従うべき規則が掲げられています。写真撮影については、これまで以下のように定められていました。

 「どのような施設・設備・車両においても、写真、フィルム、ビデオ撮影をしてよいが、照明、反射鏡、三脚など補助部品の使用は制限され得る。ニューヨーク市警から発行された有効な身分証明書を有する報道関係者には、必要な補助部品を使う権限が与えられる」

 現在、これの改定案が出されています。それは以下の通りです。

 「どのような施設・設備・車両においても、また何人(なにびと)によっても、写真、フィルム、ビデオ撮影は行われてはならない。例外は、ニューヨーク市警から発行された有効な身分証明書を有する報道関係者か、当局が書面によって正式に撮影を許可した者だけである」

<引用終わり>


 男女ペアの警察官は、「写真撮影には許可が必要なんだ」と言い、私のIDを見ながら住所や名前を記入して、違反通知書を発行しました。通知書には「TRANSIT ADJUDICATION BUREAU」と記されています。「交通裁定局」と訳せるのでしょうか。

 「どこかに出頭しなければいけないのですか?」と私が聞くと、警官は「その必要はない。罰金25ドルを郵送すれば、それで終わりだ」と言います。違反通知書には、たしかにそう書いてありました。15日以内に罰金を払えばいいようです。

 しかし通知書には、Hearing(聴聞会、審問)についても書かれていました。「罰金を払うか、もしくはHearingを受けなければいけない」とあるのです。Hearingの実態はよく分かりませんが、たぶん私はそこで事情を説明し、交通裁定局の人と話し合うことになるのではないでしょうか。

 私は今、とっとと25ドル払って厄介ごとからオサラバすべきか、それともHearingに出かけるべきか迷っています。Hearingに出かければ、きっとまたいろいろ経験でき、その様子を皆さんに報告できると思うからです。

 オフィスに戻った私は、MTAのウェブサイトをあらためて確認してみました。写真撮影については、以下のように書かれています。

 Photography, filming or video recording in any facility or conveyance is permitted except that ancillary equipment such as lights, reflectors or tripods may not be used.

 これによれば、写真やビデオの撮影は許可されたままです。私はフラッシュも反射鏡(reflectors)も三脚(tripods)も使っていません。ですから、罰金を払う筋合いはないように思えます。

 罰金を払うか、それともHearingに出かけるか、まだ結論を出してはいません。しかしとりあえず、発行された違反通知書をここで公開することにしました。転んでもタダでは起きず、利用できるものは利用するわけです。(細田雅大)

第2回 地下鉄の撮影はOKに

05年05月27日

 すでにご存知の方もいらっしゃるでしょうが、ニューヨークの公共交通機関MTAとニューヨーク市警NYPDが提案していた「地下鉄での写真・ビデオ撮影禁止案」が、却下されました。日曜日のデイリー・ニュースの報道です。

 去年5月に提案されて以来、「撮影を禁止してもテロ防止には無効」「憲法で守られている権利の侵害」と批判されてきたわけですが、これでやっとケリがつきました。「これからも怪しい人物は取り締まるが、撮影の全面的な禁止は不必要だし、実施することも不可能」とNYPDの広報は言っています。

 やっと気づいてくれて良かったですね。これで、私たちの税金が無駄なことに使われずにすみます。はるばるニューヨークまで来た人が、撮りたい写真を我慢することもなくなるのです。いやー良かった良かった。

 それにしても運が悪かったのは私です。雑誌の表紙写真を撮影していて捕まったのが、5月17日。デイリー・ニュースの報道があったのは、5日後の22日。1週間ほど事態が早く動いていたら、おそらく私は捕まらなかったのではないでしょうか。

 いや、やはりこれは運が良かったと言うべきでしょう。私は、Transit Adjudication Bureau(交通裁定局)に出かけて、Hearingを受けることにしたのですから。コラムのネタになりますし、それにそもそも、こんな経験はなかなかできません。

 ところで私は、ニューヨーク州陸運局(DMV)が発行するIDを持っています。運転免許を持たない人が、その代わりに持つことのできる「非運転者ライセンス」という変わったIDです。

 ID取得後に引っ越した場合、住所変更届けをDMVに郵送し、IDの裏面に新住所を書いておけば良いことになっています。いい加減ですね。しかし、DMV自身が「それで問題なし」と言っているので、私もそうしていたのです。

 したがって、私を捕まえ、IDを見た警官は、旧住所を書類に書き込むことになりました。「お巡りさん! それは古い住所で、今の住所はIDの裏にありますよ」と教えてあげると、警官は、「それは問題じゃない。25ドルの小切手を郵送すればいいんだから」と言いました。「私はどこかに出頭しなければいけないのですか?」と聞いた時も、「その必要はない。罰金25ドルを郵送すれば終わりだから」と言いました。

 今思い返すと、あの警官は、少々タカをくくっていましたね。私が25ドルをおとなしく払うものだと思い込んでいたようです。しかし、そうは問屋が卸さなかったわけです。Hearingに行って、いろいろ見聞させてもらうことに決めました。(細田雅大)

第3回 ノルマとかあるの?

05年06月17日

 今朝、ブルックリンの交通裁定局(Transit Adjudication Bureau)に出かけ、Hearing(聴聞会、審問)を受けてきました。既にお伝えした通り、5月中旬、地下鉄駅で雑誌の写真撮影をしていた私は、警官に見とがめられ、違反通知書を切られたのです。

 交通裁定局はビルの6階にありました。エレベーターを出てすぐのところに、空港と同じような金属探知機があります。それをくぐって室内に入ります。室内は、運転免許証を発行する陸運局(DMV)、あるいは病院の待合室と同じような雰囲気です。奥には受付カウンターがあり、計66の椅子がカウンターに向かって並べられていました。受付カウンターには「Civil Court of the City of New York」(ニューヨーク市の民事法廷)という標識がかかっています。

 カウンターの女性に違反通知書を渡すと「Hearingを受けるの?」と聞かれました。「はい」と答え、書類に名前や住所を書き込み、椅子に座って待ちました。

 「俺はここにいるべきじゃないんだ! 時間の無駄だ! ここにいる他の人は悪いことをしたんだろうが、俺は何もしてないんだよ!」とわめいている中年の黒人男性がいます。この人以外は、全員静かです。数えてみると、計16人が椅子に座り、名前が呼ばれるのを待っています。

 私はナップザックから資料を取り出しました。MTA(ニューヨークの公共交通機関)による地下鉄での禁止項目一覧、そして「地下鉄での撮影禁止案は却下された」と伝える新聞記事のコピーです。もう一度これらに目を通し、ぶつぶつ音読し、Hearingに備えました。アントニオ猪木的に言うと、この時、私の闘魂は燃え盛っていました。「理不尽なことを言われたら、多少は抵抗してやるからな」と思っていたのです。

 私の名前はすぐに呼ばれました。ジョセフ・ヒラオカという、どうやら日系の係員です。私は小さな個室に連れて行かれました。真ん中にデスクがあり、ヒラオカ係員はデスクの向こう側に座りました。「掛けてください」と言われたので、私は反対側に腰を下ろしました。デスクの上には旧式のテープレコーダーがあります。録音ボタンを押したヒラオカ係員は、私ではなく、レコーダーに話し始めました。

 「違反番号096433769。違反通知書には『マサヒロ・ホソダ氏は地下鉄駅で写真撮影をしていた』と書かれている。しかし同氏が行った写真撮影がなぜ違反なのかは書かれていない。したがってこの件は却下」

 ポカンとしている私に、ヒラオカ係員は「これで終わりですよ」と言いました。

 これで終わり?

 いったい何なのこれ?

 NYPD(ニューヨーク市警)の馬鹿げた取り締まりを批判するのはもちろん、必要ならば、ブッシュ率いる米国政府のテロ対策までも糾弾する覚悟でいた私は、燃える闘魂の持って行き場に困りました。私は叫んでしまったのです。

 「この猿芝居は何だ! とんだ茶番だ! おれを捕まえたあの警官を呼んでこい! あんたじゃなく、あいつと話さなきゃいけないんだ! 『お前みたいな警官がいるから真面目な市民が困るんだ』って言ってやるんだ!」

 私の怒りに脅えたヒラオカ係員がデスクの下のボタンを押すと、非常ベルが鳴り響きました。ドアが開き、突入してきた屈強な男数人が、私を押さえ込もうとします。私は噛みつき、手足を振り回し、暴れに暴れましたが………。

 というのは、もちろん嘘です。「これで終わりですよ」と言われた私は、「ありがとうございました」と言って個室を出ました。元の椅子に座って、判決・指示通知書(Notice of Decision and Order)が発行されるのを待っていると、先ほどわめいていた黒人男性が話しかけてきました。

 「あんた、何したの?」

 「私の件は却下されましたよ。写真を撮っていただけですからね。撮影は許されているんですよ」

 「そりゃ良かった。俺も同じなんだよ。何も悪いことしちゃいないんだ」

 この男性は、7日間乗り放題のメトロカードを買ったそうです。しかし、買った2日後に初めて使おうとすると、改札機がカードを認識しません。駅員に文句を言うと、「新しいのを買ってください」と言われたそうです。当然、揉めることになります。そこへ警官がやって来て、違反通知書を切られたとのことでした。

 NYPDでは、「違反通知書発行数のノルマ」とか決まっているのでしょうか。「傾いている市の財政を救うため、どんどん通知書を発行し、罰金を払わせるように」といった指示でも出ているのかもしれません。「マサヒロ・ホソダ氏の件は却下」と書かれた判決・指示通知書を受け取った私は、そんなことを考えながら、交通裁定局を後にしました。(細田雅大)

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