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第1回「新書を読む会」が開かれました

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 第1回の「新書を読む会」が、2026年8月21日(金)、島根県出雲市の「あわい堂」で開かれました。

 

 見学者を含めると計16名の参加があり、4カ月前の「新書を選ぶ」で決まった課題本『世にも美しい数学入門』(藤原正彦・小川洋子著/ちくまプリマー新書)について、皆で話し合いました。

 

 事前に4人の発表者が決まっていました。発表者はそれぞれ、自分の担当箇所のレジュメを書き、参加者に配りました。レジュメとは、辞書によると「発表者が参加者に配布する、発表内容を簡潔に記したもの」を意味します。

 

 私も発表者の一人でした。さらに私は、会の世話役でもありました。全体の進行に気を配りつつ、他の発表者に対してコメントしつつ、自分の発表のことも考えねばならない......という状態だったので、心の中はずっとテンヤワンヤでした。

 

 あれから一晩たった今も、そのテンヤワンヤは続いており、昨夜の会を冷静に振り返ってその全体を総括することはできそうにありません。

 

 そこでここでは、4人の発表者が書いたレジュメの特徴を紹介したいと思います。そこから、どんな雰囲気の会であったか想像していただければと思います。

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 最初の発表者は、大国美奈子さんでした。大国さんは、レジュメを書くのは初めてだったようです。

 

 課題本を読んで、ただ自分の感想を書くだけでは、レジュメにならない。レジュメは、読書感想文とは異なるものである。レジュメは、本の内容を要約して伝えることもしなければならない....。

 

 そう考えた大国さんは、要約と感想の間のバランスを取る工夫をしました。「ちょっとブレイク」と名付けた別枠を設けて、自分の感想や楽しい余談は、そこに書き込んだのです。別枠となったことで、大国さんの感想のスケールは、どこまでも自由に広がっていくようでした。

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 続いての発表者は、私でした。

 

 私のレジュメの書き方は、大学時代のゼミで身につけた書き方のままです。つまり、なるべく正確かつ簡明な要約を心がける。その上で、議論の焦点となり得るポイントがあれば、自分の意見あるいは疑問として付記する。

 

 ここで私が気をつけねばならなかったのは、レジュメのどの部分が本の要約であり、どの部分が自分の意見であるのか、混同されないようにすることでした。

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 3人目の発表者は、嘉戸絵理香さんでした。嘉戸さんは「数学」とは縁遠いようにも感じられる「音楽」の専門家です。

 

 しかし嘉戸さんによると、音楽は「数字の世界」でもあり、課題本の世界観と通じるものがある、とのこと。そして嘉戸さんは、課題本では必ずしも明確に描かれていない事柄を自分なりに積極的に読み替えることで、課題本の限界を乗り越えていくようなレジュメを書きました。

 

 「ヨーロッパ人とインド人の包容力」という章があるのです。普通に内容を読むと、その章の趣旨は「(包容力に欠けている)ヨーロッパ人と、インド人の包容力」ということだと思います。

 

 嘉戸さんはそれを承知の上で、あえて「ヨーロッパ人の包容力とインド人の包容力」という趣旨に読み替えて、つまり、ヨーロッパ人にも包容力はあるという嘉戸さんなりの観点から、優しい心根のレジュメを書いたのでした。

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 最後の発表者は、重松大志さんでした。重松さんは普段、本との接点はあまりない生活ぶりのようです。

 

 しかし今回、レジュメの書き手として手を挙げたばかりか、なるべく良いレジュメにするため加筆訂正を繰り返したそうです。そんな苦労をして仕上げたレジュメをただ読み上げるだけでも、十分に良い発表になったことでしょう。しかし重松さんは、発表の途中で、なんと、自分の書いたレジュメを、いったん捨ててしまったのです。

 

 重松さんのレジュメには、参加者への問いかけが含まれていました。重松さんは、自分の発表を途中で切り上げると、参加者を3グループに分けてグループワークを開始したのです。そしてグループごとに、重松さんの問いかけを検討しました。例えば「規則正しいからではなく、むしろ不規則だからこそ、美しいものはあるか?」「つながっていなかったものがつながったと感じる体験をしたことがあるか?」

 

 重松さんが課題本から読み取ったこうした問いについて、各グループは議論して、発表しました。そこには、読書会という場ではなかなか見られないような躍動感があったと思います。

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 以上のように、4人の発表者は、それぞれに工夫したレジュメを用意して、自分なりの発表につなげたのでした。

 

 この報告の締めくくりとして、参加された皆さんからいただいたご意見やご感想を紹介します。

 素敵な時間をありがとうございました。最初は、傍観者としていようと密かに思っていたのですが、参加してみると、参加者全員がこの場にいることに意味のあるイベントだったのだなと感じました。あんなに白熱した対話を見たのは初めてで、みなさんの考えを聴き、自分が思ったことを言葉にするという、哲学的な時間もとても面白かったです。「良い夜だったなぁ」と、帰ってからもしみじみ感じています。また、普段なら絶対に自分では手に取らない本を読むことができたことも、とても良い経験でした。(川上夏実)

 一冊の本についてみんなで考えを共有する時間、とても充実したものでした。レジュメも、人それぞれの作り方。感じ方が似ている人、自分とは違う人。「いろいろな人がいる」と日日の中で感じることがありますが、まさにそんな感じでした。選書の会がなければ、『世にも美しい数学入門』という本を知る機会もなかったですし、あの場所に行かないと会えない人もいました。繋がってないようで自分で選択して繋がってる。最後のグループワークで考えたことにも通ずるような、偶然の必然というのでしょうか。そして単純にとても楽しかったです。また次回もあれば、参加してみたいと思っています。(和田悠佳)

 読書って当然一人でするものだと思っていましたが、こんな風にたくさんの方たちと本を読むことってできるんだと、それがまた面白いって知ることができました。それぞれの参加者の皆さんのバックグラウンドからなる視点や体験談が時間を追う毎にひとつの波となって流れていっているような感じがして、一人の読書ではできない体験だったと思います(読書会とはこういうものですか)。発表者の皆さんの誠実な態度もとてもすてきでした。( 

 大変面白かったです。何といっても人によって着眼するところも、捉え方も、読み解きも、感想も異なるということが分かったことが。特に嘉戸さんの捉え方は目から鱗でした。

 色んな人と一冊の本を介して、話をすることで、自分とは異なる視点や考えを知るということ。初めて読書会というものに参加しましたが、これがポイントと言いますか、醍醐味ですね。しかも、新書が大好きな私にとって参加しないわけにはいかない会でした。自分では手に取らなかったかも知れない本を読むというのも、よかったです。

 次の新書を読む会が開催されるとしたら、来年の春とのことですので、それまでに他の読書会にも参加してみようかな、と思います。貴重な機会をありがとうございました。また次年度の会を楽しみにしています。(小柳津裕子)

 終わってみて、そもそも今回の読書会の意図、レジュメ作成の意味をきちんと理解せず当日を迎えてしまった気がします。本の要約で精一杯で、皆さんの意見を引き出すことにまで気が回りませんでした。また、今回のような対話形式の本だと、要約した内容がどちらの意見なのか、分かりやすく表すのが難しかったです(レジュメ作成が初めてだったので、対話形式でない本との比較はできませんが)。昨晩は遅くなってしまい、参加者の方々とざっくばらんに感想を言い合えなかったので、出来れば、気楽な読書会振り返りの会を企画してほしいです。(大国美奈子・発表者)

 レジュメを書くことになってから3カ月。なぜか発表まであっという間でした。読めない日があっても、毎日肌身離さず持ち歩いてヨレヨレになった課題本。とても愛着が湧き、なぜか終わってしまったのが寂しく、解放感と共に複雑な気持ちになっています。こんなに必死に読み込んだのはいつぶりだろう...と思うほど、貴重な、楽しい体験になりました。

 みんなで読む、ということは様々な視点に触れることでもあり、より深く考える機会になることが一番の面白さでした。同時に、各々の知識の量、経験、考え方のクセ、性格、などが、いつでも反映され、日頃いかに人それぞれが自分の世界で生きているか、改めて眺めることもでき、興味深かったです。

 真に本を読む、人の話を聴く、には、素直さが必要で、まさにこの本の、真理を手繰り寄せるための謙虚さ、俯瞰力(数学ではこのために計算を尽くす工程について書いてありました)、想像力、美的感受性、がそのまま、活きる作業であると思います。著者の別の著書で書かれた国語力の必要性も同様で、この本で訴えられている、宇宙の真理はいつも異世界に思えるものの奥底でひとつに繋がっている、ということの証明に、読書会も片足を突っ込んでいると思いました。

 レジュメの担当者の皆さまと、チームのように取り組めたり、皆さまのやさしさやセンスを感じるレジュメに心温まったり、参加者の皆さまのご意見やエピソードにほっこりしたり、一人で読むよりもずっと楽しい時間、体験になりました。読む以外にも、表現することの大切さと、その表現方法の幅の広さと、新しく可能性の広がるわくわくと新鮮さに、今も心躍っています。今度は、自分にとって未知な本を課題に、また取り組んでみたいと思います! ぜひよろしくお願いします♩(嘉戸絵理香・発表者)

 発表者という程よい(?)ストレスがあったおかげで、久々にしっかり読書出来たと思います。その点では、細田さんの真の目的であった、「読書」「本に向き合う」という点は見事に達成されているのではないかと思います。読書会の感想としては、この課題本の本質、「美と感動こそが人間に生の実感を与える」という結論の体現となったのではないでしょうか? 読書会に集まった人々の様々な思いや考え、それを共有する場、空気はとても美しく、感動的に思いました。(重松大志・発表者)

 しょうしょう実験的であったこの読書会を、最後までやり通すことができて、ほっとしています。趣旨に賛同いただいた「あわい堂」さん、関わってくださった皆さんには、感謝の言葉しかありません。第2回をまたやるかもしれませんが、ご興味のある皆さんは、勝手に独自に始められてもよいと思います。「いちから一緒に選ぶ」というのが鍵で、みんなで頑張れば、確実に楽しい読書会になると思います。(細田雅大・世話役)

 読書会というものに対して私自身がやや苦手意識があったこと、何より、喫茶利用のお客さんが多い当店で読書会をやって、関心を持たれる方が果たしてどれほどいらっしゃるのだろうかという不安がありましたが、いい意味で予想を裏切られる会となり、本の可能性のようなものを感じることができました。

 参加者同士では、初めてお会いされる方、これまでほとんど交わることのなかった方がいらっしゃいましたが、こちら側はそれぞれ既にお会いしている方々であったので、さまざまなバックボーンのある方々が、それぞれ「らしさ」のある読み込み方をされている印象でした。こんな感想や意見が出るだろうな、と容易に推測される言葉ばかりが飛び交う読書会ではなかったのが良かったです。

 ただ、強いて言えばになりますが、一つ不満(?)をあげさせてもらうと、全く「衝突」がなかったことでしょうか。いつか、「選ぶ会」で皆が衝突して課題本が決められず「読む会」にまで至らなかった読書会...なんてものも見てみたいな~なんて思ったり...。

 ともあれ、お越しいただいた皆さま、来れなかったけれど関心を寄せてくださった皆さまに感謝いたします。 そして、企画された細田さん、レジュメ担当の皆さま、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。(白山マイカ・「あわい堂」店主)

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